こんにちは。
皆さんは「甲の舟(こうのふね)」というお菓子を知っていますか?恐らく、ほとんどの方が知らないと思います。
なぜなら、甲の舟とは宮城県仙台市にある「甲の舟本舗」というお店でしか売られていないお菓子だからです!
甲の舟↓ 甘くて美味しい!
僕の母は東北地方の出身で、仙台市にも長く住んでいました。母方のおばあちゃん家も仙台市内にありました。そのため、僕は祖母経由でこのお菓子と出会うことができたのです。
目次
「甲の舟」との出会い
僕が初めて「甲の舟」と出会ったのは幼稚園の頃です。僕の幼稚園時代最後の運動会を見るために、おばあちゃん達がわざわざ仙台から東京まで来てくれました。
その時に、おばあちゃんが仙台のお菓子をお土産に持ってきてくれたのです。それが「甲の舟」でした。
僕はそれを食べると、その美味しさと食感に一発でハマりました。僕はあっという間に甲の舟を全て食べつくし、おかわりが欲しいとダダをこねました(笑)
しかし、甲の舟は仙台でしか手に入らないため、すぐに取り寄せることはできませんでした。僕は我慢するしかありませんでした。それが、僕と甲の舟の出会いでした。
年に数回の楽しみ
甲の舟と出会って以降、甲の舟を食べることが年に数回の楽しみとなっていました。おばあちゃん達が東京にやってくるか、あるいは僕達が仙台へ行くか、そういった貴重な機会にだけ食べることができたのです。
もちろん、東京に居ても取り寄せることはできたのですが、それはしませんでした。郵送なので高くなってしまうという理由もありましたが、年に数回だけだからこそ美味しさが引き立つということを理解していたというのもあります。
どんなに大好きなお菓子でも、毎日食べ続けていたら飽きてしまいますよね。僕は子どもながらそれを分かっていました。甲の舟だけはいつまでも特別であってほしい。そう強く願っていたからこそ、僕は郵送で取り寄せようとはしなかったのです。
お店に行ったことがない!
小学校6年間、中学校3年間と毎年のように甲の舟を楽しみにして過ごしていました。甲の舟が手に入ったら仲の良い友達にも配り歩いたりしていました。
それほど甲の舟を愛していましたが、僕はあることに気がつきました。そう、僕は一度も甲の舟のお店に行ったことがないのです!
仙台には母方の実家があるので、家族で年に数回出掛けてはいました。しかし、当時僕は犬を飼っていたので、その犬も仙台に連れて行っていました。
僕は犬と一緒にばあちゃん家で留守番をする役だったのです。犬だけ他人の家に置いていくのは不安でしたからね。そのため、僕は仙台に行っても甲の舟のお店には行けなかったのです。
まあ、親が買ってきてくれので、別に自分が行かなくてもいいかなという気持ちもありました。
しかし、僕が高校生になった頃、ある悲しい話を聞きました。それは、甲の舟が潰れるかもしれないといった内容でした。
甲の舟のお店は高齢の男性が一人で切り盛りしているとのことで、どうもその方を継ぐ人が居ないらしいのです。それを聞いて僕は本格的に、いつかお店に行ってみたい!と思うようになりました。
大学2年生の冬、初訪問!
時は流れて僕が大学2年生になった頃、地元の友達と東北旅行の話が持ち上がりました。全員が免許を取ったということで、車で東北全県を回るというのが旅の計画でした。
2017年3月22日、僕らは東北旅行へ出かけました。初日は宮城県の旅館へ宿泊する予定でした。そこで僕は、急に思いつきました。「甲の舟の店に行こう」と。
少し遠回りになるし、旅館の予約の時間もギリギリでしたが、僕は全員を説得し、仙台市内の甲の舟本舗へ立ち寄ることになりました。
その日僕は、15年間以上お世話になってきた甲の舟のお店へ初来店したのです。お店は想像以上に小さく、そして古かったというのが最初の印象でした。
そして、恒例のお爺ちゃんが一人で作業をしていました。僕と友達全員が「甲の舟」を買いましたが、梱包の作業がとてもゆっくりだったのを憶えています(笑)
↓甲の舟!(筆者撮影)
内装↓(筆者撮影)
鏡に映る店主↓ (筆者撮影)
しかし、店の中は暖かくて非常に落ち着く空間だったので、僕らはゆっくりと待ちました。僕らは大量の甲の舟を買い、店を後にしました。
そして、このとき買った甲の舟が、僕の人生の中で最後の甲の舟でした。
甲の舟本舗、閉店
それは2017年4月18日のことでした。あの、ゆっくりと梱包をしていたお爺ちゃん、すなわち、甲の舟の店主が亡くなられたのです。
僕たちの東北旅行から一ヶ月もしないうちの出来事でした。このニュースは、僕と入れ違いで仙台へ行っていた母親のLINEで知りました。
そのとき送られてきた画像が以下です。
閉店↓(母撮影)
僕は、信じられない気持ちと悲しみでいっぱいでした。幼稚園の頃から大学生となった今まで、毎年毎年楽しみにしていたお菓子がもう二度と食べられないこと、それを作り続けてこられたあのお爺ちゃん店主のこと、様々なことが頭を過ぎりました。
けれど、今となってはこう考えています。
「あのときお店に立ち寄って本当に良かった」と。
もしもあのとき友達を説得せずに、甲の舟本舗に立ち寄らなければ、僕はお店に二度と行けずに甲の舟とお別れをすることになっていたのです。
最後に
最後にお店に行けたこと、そして、店主の方に「ありがとう」と伝えることができたことだけは、本当に良かったと思っています。
改めて、このブログでもお伝えしようと思います。
甲の舟の店長、そして関係者の方々、今まで本当にありがとうございました。
2018年5月19日