人生に地図はない

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韓国の大統領はなぜ不祥事が多いのか。韓国文化から答えを探ってみる。

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2017年5月、韓国で大統領選挙が行われ、共に民主党の文在寅(ムンジェイン)氏が第19代大統領に就任しました。

 

 

この選挙は、前任の朴槿恵(パククネ)元大統領が国政介疑惑で任期途中に罷免されたことにより早期に行われた選挙でした。

 

 

国のトップが不正行為を行っていたというのは衝撃的なことですが、韓国ではこういったことは珍しくありません。大統領やその親族が不正を働いていたという事例は非常に多くあります。

 

 

 

14代大統領の金泳三(キムヨンサム)は次男が収賄の疑いで捕まりました。

 

15代大統領の金大中(キムデジュン)は3人の息子が不正蓄財などで拘束、逮捕されています。

 

16代の廬武鉉(ノムヒョン)大統領は兄が逮捕されていて、自身にも不正資金疑惑がありました。

 

17代の李明博(イミョンバク)大統領も実兄が斡旋収賄の疑いで逮捕されています。

 

 

 

このように、歴代の韓国大統領の多くが親族の逮捕を経験、あるいは自身の不正を糾弾されているのです。

 

 

日本でも田中角栄元総理大臣のロッキード事件というものがありましたが、それ以降総理大臣で大きな不祥事を起こした人はあまり見られず、やはり韓国ほど多くありません。

 

 

 

では一体、なぜ韓国大統領はこんなにも不正や不祥事が多いのでしょうか。

 

 

まず、歴代大統領の不正が具体的にどういったものであったかを見ていくと、その多くが親族がらみであるということが分かります。大統領自身が不正をしていなくても、親族が不正をしていて大統領のイメージが下がるといった事件が多いのです。

 

 

この親族の不正が今回のポイントになります。

 

 

日本において、総理大臣の親族が何か悪いことをして捕まる、といったニュースを聞くことは少ないと思います。ところが韓国では、権力者や有力者の親族が不正を働き逮捕されるということが非常に多いのです。

 

 

この差は一体どこから来るものなのでしょうか。

 

 

それは、韓国における家族の文化にあります。韓国では儒教文化が日本よりも強く残っており、家族や親族との関係を重視する、ということが非常に強く根付いています。

 

 

まずはそれについて『東アジアのアイデンティティ』(李相哲,2012, 凱風社)『なるほど!これが韓国か』(李泳釆,韓興鉄,2006,朝日新聞社)という2冊の本を読み、調べ、自分なりに結論をまとめてみました。

 

 

文中では【韓国では昔から親族関係を厳密に表す。子と親の間を<一寸>の距離とみなし、兄弟は<二寸>の距離で計算する。「おじ」は父の兄弟だから自分とは三寸離れていることになる。】(李、2012、pp215) と書かれています。

 

 

韓国では家族内の秩序や序列を重んじるのです。また、キロギパパという言葉もあります。

 

 

【意味、「キロギ」は渡り鳥の「雁」のこと。この鳥は家族の為なら何でもする習性があるということから、雁のように遠く離れた異国の地に留学している家族のために尽くすパパのことを意味する】(李、韓、2006、pp263)。

 

 

早期教育が盛んな韓国で、海外で教育をするために母親と子供は家を離れ、一人韓国に残った父親が遠く離れた家族のために働く、といった状況が多くあります。このように、韓国では家族をとても大切にする文化があるのです。

 

 

しかし、この家族中心主義的な文化が、韓国社会の様々な問題を発生させているのです。

 

 

それはウリの価値意識をもって説明可能となります。韓国では「私」を「私たち」と分離できません。韓国語で「私たち」は「ウリ」というが、「ウリ」は、韓国人しか理解できない概念なのです。

 

 

「韓国人は「ウリ(私たち)」と「私」を区別しない。」(李、2012、pp218)。

 

 

「ウリ」という言葉はそもそも、「私」と「私たち」を曖昧にするために使われるのである。「ウリ」とは、私や家族を同時に意識する言葉であり、「私」という個人を「家族の皆」と分離させないことを意味する。私という個は、家族との関係や、家族との合一を通して初めて、自我を実現できる。」(李、2012、pp219) 

 

 

これらの考え方は、自分一人だけ幸せになっても意味はない、家族全員で幸せになろう、という家族愛を大切にする儒教の教えから来ています。

 

 

こうした考えは、勿論、大統領であっても当てはめられます。大統領の親族や親戚が不正行為をして逮捕されることが多いのは、この部分の考え方が密接に関係していると言えます。

 

 

「日本では、権力者の家族であるというだけでは、銀行を動かしたり、大企業を操ったりすることはできない。ところが韓国では、大統領の息子であれば直接銀行に圧力をかけることができるし、企業を操ることもできる。権力者の家族の不興を買えば、ひいては権力者ににらまれることを意味するから、誰も逆らったりはしない。大統領の権力は「ウリ」の権力であり、ウリと同一の「家族」のものである。つまり、個人の権力も家族の成員が共有するものだのだ。」(李、2012、pp224-225)

 

 

 つまり、韓国大統領の親族に不正が多いのは、こうした家族成員に対する捉え方が原因であると言えます。

 

 

言われてみれば、ナッツリターン事件など、韓国社会には権力者の家族が権力を持ち、それを行使してしまうという問題が多く見受けられます。

 

 

韓国映画をいくつか見たことがあるのですが、どの映画も主人公が家族を大切にするシーンが含まれており、家族の関係に重きをのせいている描写が非常に多く描かれています。韓国人にとって「家族」は、日本人が思うそれ以上の存在なのです。

 

 

まとめ

 

韓国大統領はなぜ問題が多いのかという疑問から、韓国文化における家族の捉え方などについてを知ることができたのではと思います。儒教の影響が強い韓国では、上下関係や家族のつながりが非常に重んじられているのです。

 

 

考えてみれば日本にも、先輩や上司には敬語を使わなければいけない、といった風習のようなものがありますよね。これも元は儒教関係から来ています。

 

先輩や上司に対して絶対に敬語を使わなければいけない、と法律で決められているわけではありません。しかし、使わないとそれはそれで気持ち悪いですよね。

 

 

ネットだけの情報を鵜呑みにして韓国を嫌うという人が見受けられる昨今ですが、きちんと文化やその背景を知ることによって、その国を知ることが大切であると僕は思います。

 

 

参考にした文献

 

李相哲 (2012) 『東アジアのアイデンティティ』 凱風社

李泳釆、韓興鉄 (2006) 『なるほど!これが韓国か』 朝日新聞社

 

 

最後まで読んでくれてありがとうございます。